Mynavi Will
誰もがプロジェクトリーダーになれる。新規事業提案制度“MOVE”でマイナビが目指すこととは?

企業の成長に必要なものには、事業の成長や収益の拡大、ブランドの確立、優秀な人材の育成などさまざまあるが、新規事業の開発も大きな柱の一つだろう。マイナビは、そんな新規事業を立ち上げるチャンスが社員にあることを示すため、コンペティション型の新規事業提案制度“MOVE(ムーブ)”を23年1月にスタートさせた。“MOVE”とはいったいどういうものなのか? マイナビがその制度に込めた思いを新領域開発室・室長の松井徹哉に聞いた。
社員一人ひとりのポテンシャルを既存の事業に依存しない体制づくりに活かす

“MOVE”とは、「Mynavi Overall Visionary Entrepreneurship Competition」の略称で、社員から新規事業のアイデアを募集する制度だ。最初に書類によりアイデアの提案を集め、一次審査が行われる。一次審査に通ったものには検証期間が設けられ、その結果をプレゼン。そこからまた数件に絞られたアイデアが、さらに第2の検証を経て最終審査へと向かい、グランプリを獲得した案件については、会社として正式に事業化が検討されることになる。募集からグランプリ決定まで、約1年の時間をかけてアイデアはブラッシュアップされていく、この新規事業提案制度は、どのようにして生まれたのだろうか。
「“MOVE”誕生については、まず僕の所属する新領域開発室の立ち上げからお話しした方が良いと思います。マイナビは2023年に創業50周年を迎えるに当たって、経営体制が変わり“一人ひとりの可能性と向き合い、未来が見える世界をつくる。”というパーパスが定められました。その流れの中で、全社的に新しい事業への取り組みに一層力を入れていった方が良いのではないかという意識の高まりがあり、それを専門に扱う部署として22年7月に新領域開発室が立ち上げられました」
新領域開発室として最初に取り組んだのは自らによる事業開発。企業のアルムナイ、つまり、OBやOGの活用を支援するサービス“YELLoop(エーループ)”を2022年8月にリリースした。既存事業の周辺領域への参入をいち早く自分たちで実行した。
「マイナビはこれまで既存の事業に取り組むなかで、競合に追いつけ追い越せという姿勢で成長を遂げてきたと思います。その途方もない胆力は、マイナビの成長の原動力であったことは確かです。ただ、時代の変化にともなって、既存の事業に頼りすぎない多様な事業ポートフォリオを作っていくことも必要になってきました。新規事業はトップダウンで進めるケースも多いのですが、いろいろな可能性を秘めている社員も大勢いて、ボトムアップで実現できることもあるはずです。とはいえ、一人ひとりのアイデアが表に出てくることはなかなかない。そこで制度として新規事業提案の機会を作り、ポテンシャルのある方に是非チャレンジをしてもらおうと思ったのが“MOVE”誕生の経緯です」
アイデア実現をサポートする“つなげる力と巻き込む力”

“MOVE”第一期は23年1月に募集が始まり、同年12月にグランプリが決定した。その新規事業、トリミングサロンとペットオーナーを最適につなぐマッチングサービス『HugWag(ハグワグ)』が、既にスタートしている。昨年25年10月にはトリミングサロン向けのアプリがリリースされた。
「第一期の応募は250件ほどありました。周囲からは100件来たらいい方だと言われていたので、ずいぶん集まったなという印象でした。新規事業のアイデア募集は、とにかく社員のみなさんに“自由演技”をしてもらい、どんなことを考え、どんな思いを抱いているのかを表していただきたいと思っていたので、事業部や部署、年代を含めて多種多様な方から応募してもらえたのは、自分としては成功だったなと思っています」
250件ほどのアイデアが、一次審査で十数件に絞られた。その十数件の起案者は、新領域開発室のメンバーと共にアイデアをブラッシュアップしていく。そして2度目の審査の後、数件に絞られたアイデアは、さらに2度目の検証を経て、最終審査へ。この間、起案者は自らの本業をこなしながら、その工数の一部をアイデアのブラッシュアップに割く。新領域開発室の伴走があるとはいえ、簡単な道のりではないだろう。
「新規事業の立ち上げ経験がある社員はほぼいないので、どうやっていいかわからないというところから始まります。伴走する僕たち新領域開発室は、あくまでも本人の意志を尊重しつつ、インプットする機会を作ったり、実務を手伝ったりするのですが、そもそも何が正解なのかは誰にもわかりません。ですから、みんなで議論しながら、ひとつひとつ意志決定し、一緒に歩んでいきます。たとえ失敗したとしても、“それが正解ではなかったということがわかった”という貴重な発見です。次に同じことを繰り返さねばいいだけなので、会社にとっては大きな成果です。そういう考えで“MOVE”を進めています」
最終審査でグランプリを得た起案者は、その後新領域開発室に異動し、事業実現化に向けてブラッシュアップを重ねる。それが、最終的な事業化の決定まで続くのだが、そこには社内外からさまざまなサポートがある。
「事業を創出するには、一人ひとりの可能性を最大化していくことが大事です。それは、起案者自身の先見性、創造力、挑戦心、実践力もさることながら、周囲のサポートも欠かすことができません。“MOVE”にはサポーターというしくみがあって、自分で起案することはできないという人も、サポーターとして手伝うことができるのです。たとえば、起案者が“こういうことについて知ってる人はいますか?”と投げかけると、“前職がその業界でした”とか“知り合いにこんな人がいます”など、さまざまなリアクションが起こる。これはまさに、マイナビのバリューズ“つなげる力と巻き込む力”が働いていることを実感させられた出来事でした」
“MOVE”に現れるマイナビの覚悟と本気度

“MOVE”の目的は、もちろん第1には新しい事業を生み出すということ。しかし、この制度の誕生は、それだけに留まらない変化をマイナビにもたらしつつあるようだ。
「一人ひとりの社員が、“自分はこういうことがしたい!”と手を挙げる仕組みは、社内公募制度のように徐々に増えつつありますが、以前はあまりありませんでした。“MOVE”は、マイナビが会社として社員に大きな期待を寄せているのだということを見せる良い機会になったようです。実際に会社の本気度、覚悟を感じたというようなコメントを僕も聞いています。“MOVE”は、会社がバリューズにある“挑戦心と実践力”を大事にしていることを、結果的に体現したのだと思います」
“MOVE”は毎年1回の新規事業のアイデア募集を続け、今年で4年目を迎える。回数を重ねる中で松井はどのような手応えを感じているのだろうか。
「新規事業に挑んだ社員は、マイナビの中でファーストペンギン的な存在になります。そのような仲間がいて、他の社員も巻き込んで頑張っているという姿が見えることは、会社全体にポジティブな影響を与えていると思います。新規事業の立ち上げは簡単ではない。だとしたら、成功するためにはどんなことが必要なのかなど、さまざまな議論が出てきて、新たなアジェンダも出てきています。それはこれからのマイナビにとって、とても大切なことではないかと思っています」
“MOVE”の起案審査の場では、経営陣の議論も活発に行われるという。どのアイデアが良いかを評価するのはもちろんだが、“こうしたらいいのではないか”とか“自分だったらこのようにする”といった突っ込んだ意見も出るのだそうだ。
「審査をする経営陣は、さまざまな経験を経て現在のポジションにいる者が多く、活発に議論をしているのを見ると、“MOVE”が会社全体にポジティブな影響をもたらしていることを感じます。僕自身はそれを非常にポジティブに捉えていて、“MOVE”という制度が会社全体に更なる貢献ができるよう、アップデートする必要があるなと思っています。これまで“MOVE”は、テーマは何でもありでチャレンジする精神を第1に進めてきましたが、4期となる今年は会社の方向性に沿ったテーマを指定して募集するようにしました。今後も、社員の皆さんの可能性を最大化できるよう“MOVE”を発展させていきたいですね」
(まとめ)
新規事業のアイデアを広く募集する制度である“MOVE”。事業として確立していくには、アイデアをスタートとして、それをブラッシュアップし、アップデートしていく力が必要だ。“MOVE”は、“一人ひとりの 可能性と向き合い、未来が見える 世界をつくる。”というパーパスの下、“つなげる力と巻き込む力”を発揮し、“挑戦心と実践力”を持って失敗を恐れずに進むマイナビの姿をまさに体現している制度だ。
(profile)
松井徹哉
株式会社マイナビ 新領域開発室 室長
2013年、株式会社マイナビに中途入社。新卒採用支援サービスの営業職を経て、2016年より事業企画部門へ異動。主に同領域でのサービス開発に従事し、多くの新企画・プロダクトを立案。2021年4月に同部門内に新規事業開発部署を立ち上げ、その第1号案件としてアルムナイ活用支援サービス「YELLoop(エーループ)」を主導。2022年7月に単独事業室化し、YELLoop事業運営を行いながら全社的な新規事業提案制度「MOVE」を立ち上げ、制度推進に従事。経済産業省・JETRO主催「始動-Next Innovator-」9期生。
【取材・文:定家励子(株式会社imago)】
【写真:鈴木迅】


