マイナビ

Mynavi Will

人的資本経営として重要なのは、一人ひとりが可能性と向き合い成長を実感できる組織づくり

202310月に創業50周年を迎えたマイナビ。新たなフェイズを見据え“一人ひとりの可能性と向き合い、未来が見える世界をつくる。”というパーパスを掲げ、現在53年目を歩んでいる。幅広いビジネスを行っている人材総合サービスのマイナビだが、マイナビ自身は自社の人材とどのように向き合い、どのようなミッションを掲げているのだろうか。人事企画本部・本部長の粟井俊介に、その思いを聞いた。

 

サービスの質を上げる人材育成の仕組み作りの鍵は、自身の成長を実感できるかどうか

マイナビのコーポレートサイトには、人材に対する考え方として“人的資本”という言葉が記されている。これは、人材を“資源”として見るのではなく、投資して育て、伸ばしていく“資本”として捉える考え方だ。近年、金融庁や政府が大手企業を対象に人的資本の情報開示を求めるなど注目の概念だが、マイナビにとってそれほど新しい考え方ではないと粟井は語る。

 

「マイナビは、人々の進路やキャリアといった未来や生活、暮らしなどの日常を情報を通じて一人ひとりの可能性を広げ、今までの価値観にとらわれない、新しい生き方を支援している会社です。情報を届けたいクライアントと、情報を求めるユーザーの間に我々が介在する。このようなビジネスモデルでサービスの質を左右するのは、間に入る“人”だと思います。ですから、マイナビは人材に対して、高い感度を持って見ないといけないという考え方が前提としてあります。その上で、サービスの質を上げる人材の可能性、そのポテンシャルには重きを置いていますから、人を資本として見るのはある意味当然のことなのです」

 

今年4月に約500名の新入社員を迎え、従業員数は8000人を超えた。平均年齢は30歳前後、2030代の若い社員が中心であることは、人材育成の方針にどのような影響を与えているのだろうか。

 

「若い社員が多い年齢構造は、以前からずっと続いている特徴です。今の若い人たちは、一つの組織にずっと所属するというよりは、自分の力をどこまで高められるかチャレンジしたい。チャレンジの先に、できなかったことができるようになり、できることの量が増えていく、自分の成長を実感したいという思いがあります。マイナビで仕事をしたいと門を叩くのは、成長意欲の高い方が非常に多いので、私たちとしては仕事を通じてそのような成長実感をどれだけ多く感じてもらうか。時代の急速な変化に応じて、人材育成の仕組みも、より意欲を高められるような形にアップデートしていかねばならないと考えています

 

“社員の挑戦と成長のサイクルを加速させる”ことが人材育成のミッション

社員一人ひとりが仕事への意欲を高めていくにあたっては、社員が目指すキャリアの方向性と会社が考える戦略の方向性の一致が求められる。それがマッチングしてこそ、会社が成長していけるからだ。一人ひとりが可能性と向き合い成長を実感できるような組織を作っていくために、マイナビは“社員の挑戦と成長のサイクルを加速させる”ことを人材育成のミッションとしている。

 

「“挑戦と成長のサイクルを加速させる”とは、仕事で得られる“経験”とそれを支える“学習”のループを回すようなイメージです。さまざまな業務の中で多くのステークホルダーと関わり、上司や先輩からの助言を得て、多様で豊かな経験を積んでいく。一方で、自分に足りないものに気づき、それを補うための学習を支える研修の機会が豊富に準備されています。その“学習”と“経験”をぐるぐると回し続ける先に個人の成長があり、それが束になれば会社の成長につながる。それがマイナビの人材育成の考え方ですが、このサイクルを回す、加速させるのが“挑戦”なのです」

 

マイナビが取り組んでいる事業は多岐にわたり、“挑戦”できる領域は幅広いため、一人ひとりが強みや個性を発揮しながらチャレンジできることは多いはずだ。しかし、それを見つけることができずに離れていく人材も少なからずいるという。

 

「今年もチャレンジ精神旺盛で成長のエネルギーに溢れる新入社員の方々が、数多く入社しました。ただ、配属された部署で周囲から期待されることと、本人が目指していることは、必ずしも一致するとは限りません。本人のキャリア志向がうまく具現化されず、社内にチャンスがあるにも関わらず外部へ成長機会を求めマイナビを離れていってしまったら、人的資本経営の立場から言えば、非常にもったいない。そのような“ロス”は低減しなければならないと思うのです」

 

キャリア自律を社員に寄り添って手伝うことで、キャリアの充実につなげる

人的資本の“ロス”をなくし、社員のキャリア自律支援を目的として、今年5月から始まったプログラムが“My WILL”だ。

 

「自分の人生は自分のもの、自分のキャリアも自分のものです。これからどんなキャリアを積み上げていくかは自分で考えるべきであって、できることを増やしながら、方向性を明確にしていくことが重要です。そのキャリア自律を社員に寄り添って手伝う、成長を支援するのが“My WILL”の要となる社内キャリアエージェントです」

 

My WILL”の軸となるのは、“My WILLシート(キャリアレジュメ)”、“キャリアエージェント”、“My WILLサポート(研修・ワークショップ)”の3つの施策だ。

 

My WILLシート:自身の経歴や強み、今後のキャリア志向や展望、異動希望などを記入できる仕組み。常時更新ができる

キャリアエージェント:社内のキャリアアドバイザーとの面談を通じて、キャリア形成における助言や気づきの場を提供する

My WILLサポート:My WILLシートの書き方ほか、キャリア自立を支援する研修コンテンツやワークショップを実施する

 

「部署異動の希望は、以前から“キャリア希望申告”として年2回行っていました。ただ、一人ひとりの社員の業務も忙しい中で定期的に入力期間を決めて希望をとるというやり方には限界を感じていました。様々な業務経験を通じていつ自分の可能性に気づくかもわかりません。ですから、いつでも更新できるものとして“My WILLシート”を用意し、常に自分の経験を可視化して、未来に向けて表現し続けられるようにしました。また、自分の経験をどう棚卸しするか、棚卸ししたものをどうやって“My WILLシート”に落とし込むかに関しては、“My WILLサポート”で支援するのと並行して、キャリアエージェントがアドバイザーとなり壁打ち相手となって相談を受けます」

 

キャリア希望申告で異動の希望を出すことや、必要とする人材を広く公募する“社内公募制度”などは、以前から行われていた。それらと“My WILL”との違いはどこにあるのだろうか。

 

異動希望も社内公募も、起点となるのは自分の意志です。ただ、ひとつの事業部に所属して仕事をしていると、マイナビ全体としての事業領域やできる仕事の幅広さはなかなか見えにくい。のめり込んでいけばいくほど周りが見えにくくなります。そこで、“あなたには別の可能性もありますよ。こんな仕事もあるのは知っていますか?”と、視野を拡げ客観的に気づかせてくれるのが“キャリアエージェント”なのです。そのアドバイスによって、マイナビグループの中にキャリアを充実させていく道がいくつも見つかったということになれば、それも“社員の挑戦と成長のサイクルを加速させる”ことにつながるはずです

 

アルムナイとのつながりで大きなマイナビネットワークを実現

MyWILL”の目的のひとつには、人的資本の“ロス”の低減があった。その“残念ながらマイナビを去った人材”に対しても、再びつながりを作り、ビジネスパートナーとして「未来志向の再会」の機会をつくる取り組みも行われている。

 

「きっかけは50周年記念事業プロジェクトです。以前から、マイナビが提供するアルムナイ(退職した社員)ネットワークサービス“YELLoop(エーループ)”を使って、オンラインでのつながりは持っていました。ただ、それだけではなかなか有機的なつながりというのができにくかったので、50周年をきっかけにオフラインで交流できる機会をつくってみようと。しかも、単に同窓会のように思い出話をするだけではなく、未来に向けたつながりをつくるビジネスマッチング&交流会のイベントとして開催しました。結果的には成功でしたね。年齢問わずいろいろな方が集まってくださって、実際にマイナビ社員と仕事でつながったケースもいくつかありました。マイナビを卒業しても、マイナビとつながる窓口があるのだということを知っていただくという意味では、すごく良い機会だったと思います」


(アルムナイがプレゼンを行う様子)

(アルムナイとマイナビ社員が名刺を交換している様子)

 

粟井は人事部門のトップとして、これからのマイナビ社員のキャリアをどのように見据えているのだろうか。

 

「マイナビは今8000人を超える社員がいます。一緒に働く仲間の多さというのは、事業を前に進める大きな推進力だと思います。この一人ひとりの持つ価値を生み出す力は、会社として秘めている成長の源泉ですから、人事部門の責任者としてはその力を高めるために、さまざまな角度からチャレンジしていかなければならないと考えています。人生100年時代と言われて久しいですが、訪れる様々なライフイベント、生活環境の変化などにも長く寄り添って行ける会社にしていくことも大事ですね。誰もが、その人ならではの持ち味や可能性を必ず持っています。それを最大限に解放し、高めていくことに、これからも挑戦してきたいと思います

 

 

社員一人ひとりの挑戦と成長を支えるため、経験と学習のサイクルを促進し、自身のキャリアを主体的に描ける環境づくりを推進しているマイナビ。20255月にはキャリア自律を支援する「My WILL」もスタートし、キャリアエージェントや各種サポートを通じて、自らの可能性に気づき、行動を起こせる仕組みを整えた。

また、マイナビを卒業した人材ともつながりを保ち、ビジネスパートナーとしての再会の機会を創出することで、人的資本を長期的・多面的に捉える姿勢も示している。

多様な人材が、それぞれの持ち味を活かしながら成長できること。マイナビ社員の未来を切り拓く力にさらに期待が寄せられる。

 

 

Profile

粟井俊介(あわい・しゅんすけ)

株式会社マイナビ 取締役 上席執行役員/人事企画本部 本部長

2003年株式会社毎日コミュニケーションズ(現・マイナビ)入社。大阪支社の就職情報事業本部で新卒領域の営業を8年間経験した後、2011年に東京本社に異動。就職情報事業本部 事業推進部で企画職に従事する。2017年から大手クライアント専門営業チームに配属。2020年から社長室長補佐として、女子プロサッカーチーム「マイナビ仙台レディース」の立ち上げに従事。同12月から1年半にわたり株式会社マイナビフットボールクラブの社長を務める。20227月より執行役員社長室長として帰任。マイナビグループ全体のブランディング・コーポレートコミュニケーション領域を統括し、マイナビ50周年記念事業を主導。20241月より現職に異動。

 

【取材・文:定家励子(株式会社imago)】

【写真:吉永和久】

 

 

 

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