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「AI戦略室」が目指すマイナビの業務効率化。マイナビらしさを大切にしながら、人を軸にAIをパートナーとして利用する

 

技術の進化は目覚ましく、私たちの生活にどんどん普及して急速な変化をもたらしつつあるのがAIだ。ビジネスの世界においては、人材不足をはじめとする課題解決に寄与するのではないかという期待もあり、取り組みが進んでいる。マイナビでも2020年末からプロジェクトが発足し、昨年には専門の部署「AI戦略室」が立ち上がった。そのリーダーである谷本健次にマイナビならではのAIの活用事例について話を聞いた。

 

全社横断的に人を集め、AI研究推進プロジェクトが始動

マイナビに、さまざまな事業部を横断する形でのAI研究推進プロジェクトが立ち上がったのは202012月。当時谷本は、人事企画本部で新卒・中途採用から新入社員及び内定者の育成、入社支援を担当していた。その業務の中で、さまざまなデータを扱う機会が増え、AIの領域に興味を持ちはじめたという。

 

「プロジェクト参加への呼びかけが始まった45年前というのは、身近に使う家電やアプリなどにAIが搭載されるようになり、今後競争原理を左右していくのはAIだろうと言われはじめた頃です。マイナビもその流れにきちんと対応していくためにプロジェクトが発足し、私もぜひ参加をしてみたいと手を挙げました」

 

AIというとエンジニアの領分だと思われがちだが、このプロジェクトにはエンジニアだけではなく、文系の人材、そして対象領域が異なるさまざまな事業部から広く参加したことに意義がある。

 

「マイナビは、幅広い年齢層のユーザーにさまざまなサービスを提供していますが、プロジェクトも最初は事業化して収益を上げるというわけではなく、“各自の業務のどこにAIを取り込めるか”ということから考え始めました。一人ひとり扱うサービスは違っても“ここは共通点があるね”、“ここで使ったものは、将来これにも展開できるかもしれない”などと、横展開の視点で見られたことは、業務変革にも大きな影響があったと思います」

 

人事部門に所属していた谷本にとって、AIを業務に活用するとはどのようなイメージだったのだろうか。近頃では、採用面接にAIを導入する企業も増えているというが、求職者、企業共に必ずしも歓迎しているとは言えないだろう。

AIが人を判断するというのは、誰でも抵抗感があります。ましてやマイナビは人生の大きな決断に関わるサービスを扱っている会社ですから、慎重に考えました。例えば、これまでマイナビの採用活動においては、 “人と会う”ということを大切にしてきました。なので、効率化のためとはいえ、そこにAIを取り入れれば自社らしさを失うことに繋がるのではないかと思います。また、採用する側と同様に、求職者の方にも複数の選択肢があります。どの企業を選ぶかという意志決定に必要な情報は、直接会って説明をして、“人対人”をベースにする。“人対人”が私たちの軸にあるという思いは、プロジェクト参加者の間で自然と共有できていたと思います。」

 

AI活用によって生まれた時間を何に使うのかが重要になる

テクノロジーはとかく進化の速度や度合いが注目されがちだ。私たちにとって本当に必要なのは、それらを使いこなしコントロールする人間の思い、能力であることにはなかなか気づきにくい。“人と会う”を前提とした“マイナビらしさ”を軸としたAIとの付き合い方を、どのように模索していったのだろうか。

 

「プロジェクトのアドバイザーになっていただいた野口竜司さんに最初に言われたのは、“AIで何をしたいというより、まずなぜAIを取り入れようと思ったのか、そもそも今、目の前にある業務課題とは何なのか、何を解決したいのかを考えるべきだ”ということでした。順番が逆になり、“AIはこんなにいろいろできることがあって、じゃあどれを持ち込んだらこの課題が解決されるのか”と考えていくと、なかなか最適解にはたどり着きにくい。アドバイスをもとに、ビジネス課題を最初に置いて、それに対する打ち手、手段としてAIを捉えるということがプロジェクトの前提として始められたのは、とても良かったと思います」

 

マイナビらしさを活かし、AIはパートナーとして付き合うべき

全国の支社で行ったAI勉強会の様子

 

世の中では、ChatGPTをはじめとして急速にAIが普及し、いよいよ組織としてきちんとAIに取り組んで行こうという機運の高まりを受け、202410月に「AI戦略室」が設立された。その室長になったのが谷本である。

 

「“AI戦略室”は、私たちのようなビジネスの企画・運営に携わるビジネスサイドのメンバーと、データサイエンティストと言われるエンジニアとが融合した組織になっています。主な機能としては3つ。1つは“AIビジネス企画”といってビジネスサイドがそれぞれ所属していた事業部に対して、AIを使った業務改善を企画・提案していきます。もう1つは、その業務改善のためにデータサイエンティストがシステムを内製開発する“AIソリューション”。そして3つめが“AI推進”です。全社員ひとりひとりにどうやってAIを使ってもらうかを考えるだけでなく、実際に推進室のメンバーが全国の支社を回って勉強会を開催します。勉強会の後は質疑応答のほか、社員の席にまでいって個別に使い方をレクチャーするなど、まさに草の根的で地道な活動です。徐々に効果が表れてきていて、オンライン勉強会開催の告知をすると、数百名単位で人が集まるようになりました。社員の気持ちに火が付いて、イノベーターが多く集まってきているという手応えをすごく感じています」

 

その手応えは、昨年AIを導入した21案件で、平均して25%の業務効率アップに繋がったという数字にも表れていると言える。

 

「業務効率化として一番インパクトがあるのが、求人を中心とした「“原稿生成”だと思います。定型化された業務であればあるほどAI導入の効果は大きく出てきますが、勘違いしてはいけないのは、その効果も今まで私たちが培ってきたノウハウやナレッジがあってこそです。ノウハウやナレッジをAIに学習させているから、どこにでもあるようなコンテンツではなく、マイナビらしい安心安全な情報を届けられる。例えば、新卒サービスであるマイナビ20XXや、マイナビ転職など長年培ってきた求人サイトがありますが、掲載いただいているクライアントの様々な採用課題や求人への考え方を“求人原稿”として、また広告として安全な情報として表現してきました。これらを人の手によって繋いできたことこそ、マイナビらしさがあります。AIはもちろん万能なツールであることは間違いないのですが、あくまでもマイナビのノウハウやナレッジを活かすためのパートナーとして見るべきでしょう。フラットに適切な距離感を保ちながら付き合っていくのがいいのではないかと思っています」

 

社会課題に取り組むマイナビであるために欠かせないのは、安全なデータの活用

2023年に創業50周年を迎えたマイナビが、ソーシャルイノベーターとして社会課題解決に寄与、貢献するために、AIはどのように関わってくるのだろうか。

 

「私は、マイナビは社会課題に常に向き合う会社でありたいと考えています。ユーザーやクライアント一人ひとりの可能性を追求していくとともに、社会課題にもきちんと取り組みながら、その一助となるような形でAIをうまく使っていかなければなりません。そのためには、個人情報の取り扱いについてクリアにした上で、世の中の傾向とともに、私たちが今まで培ったノウハウを適切に見える化してデータとして有効に活用していく。それが社会課題の解決につながるよう、私たちマイナビがAIと共に取り組んでいくことだと思います」

 

そのようなマイナビ全体の動きを背景に、「AI戦略室」のリーダーとして、マイナビのAIに関する取り組みを進めている谷本は、今後の展開をどのようにイメージしているのだろうか。

 

「社員のAI活用に向けた思いにはどんどん火が付いてきた状態なので、その火を絶やさずに、みんなが当たり前に適切な使用方法でAIを使う状態を目指していきたいですね。さらに、その結果生まれた価値を、ユーザーやクライアントにどう届けていくかということを追求していきたいです。私自身は人を中心に考えていることに変わりはなく、自分が信念をもってしている仕事が、最終的には会社の未来や、その先にいる人々に繋がっています。このように未来に向けたポジティブな気持ちでいられることが、やりがいに繋がっていますし、もっといい活用ができるように引っ張っていきたいと思います」

 

(まとめ)

今や、ビジネスでのAI活用はどんな業界でも必須の課題となっているが、そのアプローチの仕方や方法は無数にある。だからこそ、何を軸に考えるか、ぶれない視点が重要になるのだろう。谷本が参加したプロジェクト、そして今リーダーとして牽引する「AI戦略室」は、マイナビらしさを大事に、確固たる信念を持って進められているからこそ、確かな実績を上げている。

 

Profile

谷本 健次(たにもと けんじ)

デジタルテクノロジー戦略本部 AI戦略室 室長 兼 人事企画統括本部 人材開発統括部 統括部長

2007年に毎日コミュニケーションズ(現・マイナビ)に中途入社。就職情報事業本部の営業として企業の新卒採用事業の採用広報・採用戦略に携わる。2019年に人事統括本部へ異動し、新卒・中途採用から新入社員及び内定者の育成、入社支援を担当。202410月にAI戦略室に異動し、人事統括本部と兼任で業務に携わっている。その他、全社プロジェクトでは2021年からAI研究・推進プロジェクト、2022年のパーパス策定プロジェクト、2023年の50周年記念事業プロジェクトにも関わる。

 

※野口 竜司(のぐち りゅうじ)氏

マイナビ Executive AI Adviser(エグゼクティブ AI アドバイザー)。 AIスタートアップELYZA 取締役CMOZOZO NEXT 取締役CAIOChief AI Officer)などを経て、マイナビ Executive AI Adviser に就任。数々のAIプロジェクト推進に関わる一方で、AIを学ぶ塾を主催するなど、AI人材の育成にも力を入れている。著書に「ChatGPT時代の文系AI人材になる」「文系AI人材になる」など。

 

 

 

 

 

【取材・文:定家励子(株式会社imago)】

【写真:吉永和久】

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