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人間も自然環境の一部。環境を壊さないことで自分にも未来の人にも豊かな生活を

レジ袋の有料化によるエコバックの普及、大手コーヒーチェーンの紙ストロー導入など、エコに配慮した動きは私たちの周囲でもはや日常となっている。ただ、個人でできることには限度があるのも事実。ノイハウス萌菜氏は、2016年転職を機にイギリスから来日。使い捨てストローに対する違和感からステンレスストローを制作・販売する活動「のーぷら No Plastic Japan」を立ち上げる。そんなノイハウス氏に、今私たちができることについて伺った。

自分の中で日本語はクリアしたいチャレンジだった

ドイツ人の父と日本人の母のもとに、ドイツで生まれたノイハウス氏は、6歳の時にイギリスに移住。そして2016年から日本に住むようになって約6年。現在、さまざまな顔を持っている。東京を放送対象とするFMラジオ局J-WAVEの月~木午前中の番組のナビゲーター、ステンレスストローのブランド“のーぷら No Plastic Japan”の代表、オーガニック食材やワインなどの量り売り専門店“斗々屋”の広報担当、そして今年2歳になった女児の母親でもある。そんなノイハウス氏の中にずっとあったのは、日本語を活かして仕事をすることだったのだという。

「イギリスではイギリスの学校に通いながら土曜日は日本人学校に行って、日本語を学んでいました。自分のアイデンティティ的に、その力を活かさなければいけないというような気持ちがあったんですね。周囲にはいろいろな国から来た人が多いので、自分がそこに生きている人間ではない、ヨーロッパ人ではないというような感覚を持つことはありませんでした。でも、年に1回ぐらい日本に来ると、自分は”100%”日本人じゃないんだという思いもあり、私はここでどれだけできるのか、挑戦してみたいと考えたんです。不思議なことにドイツ語に関してはそうは思わなかったんですが、日本語はなぜかひとつ自分の中でのもやもやした気持ちを解消にしたいチャレンジでした」

昨年から始まったラジオの仕事は、伝えることの責任の重さと重要さを感じる日々

イギリスの大学を卒業後、ノイハウス氏はゲームアプリのマーケティングの仕事に就く。募集する人材はバイリンガルが条件だったので、自分の力を活かせると考えた。ただ、ユーザーに課金をしてもらうためのマーケティングに疑問を感じ始めて退職し、世界中に拠点を持つコンサルタントの会社に移る。

「その会社では日本オフィスに配属になって、それをきっかけに日本に移住しました。当時社員は私を含め4人ぐらいという小さなオフィスでとても忙しくはありましたが、クライアント企業の理念を広く伝えるという仕事に大きなやりがいを感じられました。最初は、読み書きだとか、メールの文章とか、大変だなと思うことも多かったんですけれど、そのうちにちょっとぐらい漢字を読むのがみんなより不得意だったとしても、私には他にできることがあるしと思えるようになって、日本語に対するコンプレックスみたいなものを乗り越えられたような気がします。そういう自分のこだわりは捨てた方がいいなと思って」

“できることから、ひとりでも”とステンレスストローブランド設立

ノイハウス氏が日本に移住して2年ほどたったころ、日常である違和感を覚えるようになる。それは、身の回りにある使い捨てのものの多さ、尋常ではないゴミの量だという。

「あるとき、オーガニック系のカフェに入ったら、プラスチックのカップで水が出されてとてももやもやしたんです。それで、店内用の場合は再利用可能なカップやカトラリーに変えてもらえないだろうかと、お店に連絡をしました。すると考えてみますというお返事があって良かったんですが、お店にとって私はただの一消費者。もっと多くの人の声として発信していかなければならない。まずはできることから、ひとりだけでもはじめてみようと思い、“のーぷら No Plastic Japan”を立ち上げました」

起業というとハードルが高いイメージがあるが、“できることから、ひとりでもやってみよう”という柔らかな思いが功を奏したと言えるのかもしれない。

「再利用可能なステンレスのストローを作ることになったのは、ストローが代表的なもったいないものだと思ったからです。じゃあ、素材は何にするのか、竹かステンレスかに始まって、最初は何本作るか、ロゴはどうするかなど小さいことを決めていくのが楽しくて。お金を儲けなきゃというプレッシャーもありませんからワクワクする毎日でしたね」

情報発信は、仕事柄もあって当然得意。Webサイトを作るのも好きだったのだとか。とはいえ、仕事の合間にする作業量には限度がある。ノイハウス氏は“のーぷら No Plastic Japan”の活動にもう少し時間をかけるため、会社に1週間の勤務日数を5日から4日にしてほしいという要望を出した。

「そんな要望を受け入れてもらえるのか、正直不安もあったんですが、環境活動で得たネットワークや経験はコンサルティングの仕事にも活かせるということで理解してもらうことができました。私自身は週5日という仕事、働き方はちょっと長いような気がしていて、実際に週4日にすることで、よりオフィスの仕事が好きになった部分もあったんです。また、会社ではその後SDGs関連の相談も増えてきたりして、貢献できたのではないかと思っています。自分がやりたいことを示すのは、会社と個人がwin-winの関係になれる良い方法なのではないでしょうか

個人に責任を置くのではなく、仕組みを変えることから

“のーぷら No Plastic Japan”の活動を始めて4年。ストローはもちろんのこと、飲食店で使われる容器もプラスチックから紙製への転換が広く行われている。そんな中、コロナ禍でなかなか叶わなかったイギリスへ、先日3年ぶりの帰国を果たしたノイハウス氏は、エコに対する取り組みの進んでいるイギリスの状況を日本と比較してどのように見たのだろうか。

「イギリスも日本ほどではありませんが、パッケージに入れて売っているものはまだ多いです。でも、レジ袋は日本より高いので本当に必要なとき以外は買わない選択をする人が圧倒的です。リサイクルへの取り組みも進んでいて、地域によりますが生ゴミを回収して堆肥化してくれるシステムもあったりするので日本とは大きく違いますね。私がステンレスストローを作って発信を始めて4年。日本はまだここなのか……と自分でガッカリすることはあります。どんなにゴミを減らそうと努力しても個人でできることには限りがありますし、パッケージに入っていないものを買おうとしたら、リンゴ、トマト、ブロッコリーとかだけで何も食べられません。そうやって私自身、自分を追い詰めてしまったことも過去にはありました。でも、今はどちらかというと、個人に責任を置くのではなく、政府や企業が仕組みを変えていくべきではないかと思うようになりました」

お米やパスタなど、好きなものを好きなだけ買える“斗々屋”。パッケージも無駄にならない

ノイハウス氏は、“のーぷら No Plastic Japan”の役割は一区切りとして、最近はパッケージフリー、つまりプラスチックなどの使い捨ての容器を使わないで食材を販売する量り売り専門店“斗々屋”の広報担当としての働きも始めている。

「環境に良いことをしようというと、どうしても“こうしなさい!”とか“あれをしちゃだめ!”というようなメッセージになってしまうんですが、その前にもっと私たちが無理をしなくてもできるようなルール作りが必要なんじゃないかと思うんです。“斗々屋”で行っているのは、何でもパッケージで売るという仕組みを変えようという動きで、それをより多くの人に広めることに軸足を置いています。人間も自然環境の一部。結局は同じひとつのものなので、環境にいいことは自分たちにとってもいい環境を壊さない生活の方が豊かなので、それが自分のため、未来の人たちのためになるぐらいの気持ちを多くの人に持ってもらえたらいいなと思っています」

野菜も好きな大きさのものを好きなだけ選べるので無駄を減らせる

現在、“斗々屋”の店舗は東京の国分寺と京都の2店のみ。しかし卸事業として量り売り専用の食材を提供したり、コンサルを行っているお店は全国約50店舗ある。もっと増やして多くの人が日常使いできるようになれば、大きな変化が起こるに違いない。

普通の生活をリスナーと共有するのも自分の役割

ノイハウス氏は昨年4月より月~木の午前9時から午後1時まで、ラジオのナビゲーターを務めている。それまで属していたコミュニティには環境問題に関心のある人が多かったことを考えると、ずいぶん遠いところに来たなという印象もあるのだという。

「私の周囲には、マイカップ、マイボトルを持ち歩くのが当然という人ばかりでしたが、ラジオ局に行くとみなさん普通に毎日ペットボトル飲料を飲んで、テイクアウトのプラスチックカップでコーヒーを飲んでいるんですね。非難するわけではないですが、マイカップマイボトルが当然じゃない人がこんなにいるんだという気づきになって、私の環境問題に対するモチベーションアップにも繋がるなと思いました」

ラジオの仕事に出会ったのは、前職のコンサルタント会社の育休明け前のタイミングだったそうだ。

「朝の番組なので、終わってから時間は結構あるなと思ってたんです。でも、お昼を食べてちょっとゆっくりしたらもう娘のお迎えの時間で、ほとんど余裕はないですね。でも、だからこそ優先順位を無理矢理つけるというか、自分の中でやるべきことを絞って、コントロールできる状態なのでいいですね」

家事に追われたり、娘にご飯を食べさせ歯磨きをさせたりと、普通の生活をラジオのリスナーと共有するのも、自分の役割なのではないかと語るノイハウス氏。現在までのキャリアを振り返ると、どんなことにも物怖じせずに飛び込んでいく人という印象を受ける。

「大学時代までは、自分は○○をする人になる! と決めないといけないと思っていました。でも、実際に仕事を始めてみると、キャリアってそういうものではないんだなと思ったんです。“自分をブランディングすることが重要”とかよく言いますけれど、あえてそこを追及せずに、白か黒かじゃなくて、グレーでもいいんじゃないでしょうか。

ラジオの仕事はまだ1年と少しですが、伝えるという責任は重大ですし、伝え方の勉強もしつつなんですが、やりがいは大きいですね。私自身、今後も何かチャレンジしたいということができたら、ポンと向かえるようにしたいと思っています」

 

(まとめ)

環境問題への取り組みは、自分ひとりのやれることの小ささに驚き、ハードルが高く感じられて、怖じ気づいてしまう人も多いのではないだろうか。しかし、人間も自然環境の一部であると思えば、環境を壊さないことはひとりひとりにとって「自分事」になる。肩に力を入れず、できることから始めていきたい。

 

【取材・文:定家励子(株式会社imago)】

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