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プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会代表 平田麻莉

パラレルキャリア、フリーランス等、働き方を自分で選択する時代に


撮影協力:DIAGONAL RUN TOKYO

働き方改革が注目されるなか、「働き方」に対する価値観が変わりつつある。本業とは別に仕事を持つパラレルワークや個人の能力や経験を活かして報酬を得る「フリーランス」の仕事形態は様々ある。いくつもの仕事を並行する複業、会社に属している人、属していない人――。一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会を発足した平田麻莉さんに、日本の社会が直面する働き方の多様な選択肢について取材した。

キャリアの複線化で、変数が増えると価値は高まりリスクヘッジにもなる

――まずは、「フリーランス」と「パラレルキャリア」の定義を教えてください。

平田:はい。フリーランス協会ではフリーランスを、「特定の企業や団体、組織に専従しない独立した形態で、自身の専門知識やスキルを提供して対価を得る人」と定義しています。フリーランスにも種類があり、組織との雇用関係がない独立系と、雇用関係を維持しながら個人で別の仕事もする副業系に分けられます。
そしてそれぞれに、法人化している経営者、個人事業主、開業届を出していない“すきまワーカー”等、多様な働き方があるのです。たとえば、独立系フリーランスですきまワーカーというと主婦や学生、シニア等ですね。
一方、パラレルキャリアとは、複数のキャリアを並行して築くことで、このような人をパラレルワーカーと呼びます。独立系フリーランスにも副業系フリーランスにも、パラレルワーカーは大勢いますよ。
複数の仕事を行う方法としては、平日のコアタイムをメインの仕事のために確保した上で、隙間時間にその他の仕事をあてる「水平型」と、曜日や時間帯で複数の業務を振り分ける「垂直型」に分けることができます。会社員は前者、独立系フリーランスは後者の働き方が多いイメージです。



――なぜ今、パラレルワーカーが注目されているのでしょうか?

平田:リーマンショックや震災といった大きな環境の変化を経験した後、今の会社が定年を迎えるまで存在するのかどうか、そもそも1社で勤め上げること自体がリスクなのではないかと認識する人が増えてきました。たとえ会社が定年まで続いたとして、その後はどうなるのか…。
人生100年時代といわれている今、60代で定年退職した後も働き続ける人が増えてくると思われますが、そのとき、単一のキャリア、コミュニティ、スキルで通用するでしょうか。
リスクヘッジとしてそれらを複線化しておくことが賢明だと考える、感度の高い人たちがパラレルワーカーに注目しているのです。

――収入を理由にする人だけではないのですね?

平田:そうですね。キャリア面のメリットを重視し、収入は二の次、三の次というパラレルワーカーも意外と多いです。自分の強みを客観的に評価する場としての価値に注目されているのでしょう。あるいは、「本業にするほど自信はないけれど、好きなことを仕事にしてみたい」というとき、副業は小粒のタスクベースで始められるので、転職よりリスクが低いというのもメリットです。

企業のパラレルキャリア推奨には4つのメリットがある

――2018年は副業元年といわれています。政府が働き方改革の一環として後押ししたこともあり、社員に副業を導入、あるいは検討中の企業は増えていますが、企業側にはどんなメリットがあるのでしょうか。

平田:メリットは4つあります。まずは、採用面でのメリット。労働人口が減少し、雇用の流動性も高まる中、1社への忠誠心を求めるのでは雇用を維持しづらくなっています。退社されてしまうよりは、副業を認めて労働力を確保したほうが良いわけです。
2つ目は人材育成面。副業は人脈や視野を広げる他流試合となる上に、倍速で経験値を増やします。社員の成長は企業にとって大きな魅力となるでしょう。
3つ目はオープンイノベーションの観点です。社員が社外のプロジェクトに参加し、異業種・異分野のノウハウを自社に持ち帰ることが企業を活性化させるでしょう。
最後が再就職支援です。副業の経験は社員にとって、自身のキャリアの棚卸をし、定年後のセカンドキャリアを考えるきっかけになります。これらが企業のメリットだといえます。



――それでは逆に、副業を認めないという企業は何が障壁になっているのでしょうか?

平田:私が見たところ、それは「本業に支障が出るのではないか」「情報が漏洩するのではないか」という2つの漠然とした不安のようです。
まず本業への支障ですが、これを危惧するのは「ジョブ・ディスクリプション」(※)や人事評価制度がしっかりしていない企業に多いと感じます。役割やKPIが明確ではないので、「出社して一定時間を過ごしているかどうか」という、本質と離れたところで評価してしまうのだと思われます。職務がきっちり遂行できていれば、その他の時間を副業に費やしても問題ないはずです。この点を正していくことは、副業解禁以前の問題として、日本企業の生産性を上げるために大事なのではないかと思いますね。
同様に、情報の漏洩に対しても、副業によってリスクが高まるとはいえません。労働力の流動化や仕事のクラウド化が進む今日、そもそもコンプライアンスの意識が徹底されていることが重要なのです。人事評価制度とコンプライアンスが整備されていれば、副業への不安は根拠のないものだとわかるでしょう。

※職務記述書ともいわれ、職務の具体的な内容やその職務の目的や目標、実行する人の責任や必要となる知識、技術を明確にするもの

フリーランスの課題だった社会保障を、企業も巻き込んで提供する

――働き方への関心が高まる中で、2017年にプロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会を発足されたわけですが、きっかけは何でしたか?

平田:私自身、企業の広報や、幹部研修教材の制作等、パラレルなキャリアを積み重ねていたのですが、周りのフリーランスと情報交換をしたり、出産を経験したりする中で、徐々にフリーランスや副業の課題が見えてきました。
なんといっても、フリーランスはライフリスクに対する社会的な保障が薄い。病気やケガで働けなくなったときも、労災保険がないので治療費や生活費は自分で工面しなければなりませんし、産休育休や介護休暇といった制度もありません。また企業との関係性も課題で、企業側も、フリーランスとどんな契約を結んでプロジェクトチームに加えれば良いのか、模索している状態です。今はいろいろなことが過渡期なのだと思います。
そこで、小さなフリーランスの声を集めて大きな声で発信しようと、この協会を発足しました。フリーランスの当事者が立ち上がって運営しているため、労働組合のイメージで捉えられることもありますが、様々な企業とも連携しているので、フリーランスと企業の対立構造というわけではありません。現在、100社ほどの賛助企業にご支援いただいています(2018年8月現在)。



――企業を巻き込むことで画期的なインフラ提供が実現しましたね。

平田:そうですね。最たるものが、大手保険会社4社の共同提供によって実現した、フリーランスのための賠償責任補償の確立です。これは、年会費10,000円で協会員になると、業務上のミスやトラブルによる納品物の瑕疵、情報漏えい、著作権侵害などによる損害賠償をカバーする保険が自動付帯されるというものです。上限1億円の補償は、発注する企業にとってもフリーランスを信頼し、契約に至る根拠となりえます。さらに、税務や法律関連の相談、健康診断や人間ドックの優待などの福利厚生、任意加入で万が一の病気やケガに備える所得補償制度も用意しました。
ここまでできたのは、趣旨に賛同してくださった企業の皆様のおかげです。これだけ充実した内容で年会費10,000円というのは破格の安さですが、フリーランスは年収に幅があるので、誰もが気軽に入れるものにしたかったのです。保険会社の皆様にもかなり無理な条件を受け入れて頂いたと思っています。「クライアントからの信頼性が上がって契約締結までのスピードが短くなった」とか「補償があるから安心して、これまで受けて来なかった大きな仕事を受けることができた」等、うれしい声が届いています。
活動の柱としては、こうしたインフラ提供の他に、職種別交流会等のイベントでスキルアップやネットワーキングをサポートするキャリア支援、会員を中心とした調査結果をまとめたフリーランス白書の公表二拠点居住やワーケーションの提唱でプロ人材の知見と地方企業とのマッチングを図る地方創生など8つのプロジェクトが進行しています。また、フリーランスはローンが組みにくい、クレジットカードが作れない等、社会における信用力が低いのですが、今、金融機関と連携しながら個人の信用力を可視化する仕組みづくりに挑戦しています

――いずれも、フリーランスがこれまで切実に必要としながら、一人ひとりではとても実現できなかった内容ですね。

平田:ありがとうございます。協会発足から1年半、有料会員は1,200人を超えました。その9割は、組織との雇用関係を一切持たない独立系フリーランスです。無料会員はもうすぐ1万人で、副業系フリーランスやフリーランスを目指す人もたくさんいらっしゃいます。

多様な働き方によって、仕事への愛着や幸福感を生む時代になる

――これからも、パラレルキャリアやフリーランスといった選択をする人は増えそうですね。

平田:はい、パラレルキャリアやフリーランスといった選択をすることが正しいというわけではなく、働き方の選択肢に挙げられることが当たり前になる社会を目指しています。幸せのあり方が多様化しているように、働き方も多様化している中で、自分の力で勝負をしてみたい、収入をアップさせたい、自分の裁量で仕事をしたいという人がパラレルキャリアやフリーランスの選択をしています。また、時間と場所の制限から自由になり、ワークライフバランスをとりやすいということから、結婚、出産、介護といった生活の転換期のタイミングで選ぶ人もいます。フリーランス白書の調査では、パラレルキャリアやフリーランスを選んだ方の満足度や仕事への向上心は総じて高くなっていますね。

――職場環境は、今後どのように変化していくとお考えですか。

平田:組織の壁が融解し、会社員やフリーランス等、様々な働き方をする人々とプロジェクト型で仕事をするようになると思います。例えば、社内のプロジェクトに業務委託等で外部の人が入ってきて、一緒にチームを組む機会が増え、会社の名前よりも“個”が際立つ時代になるわけです。
会社員の働き方はリモートやフレックスで柔軟になり、フリーランスは社会保障が改善されていく等、双方を隔てていた差違はどんどん小さくなっています。
これからは、一方通行だった雇用と非雇用の行き来が、今よりずっと多くなるでしょう。人生のある時期は非雇用で、また雇用に戻り、ライフステージの先でまた非雇用に…というような流動化はいっそう進むでしょう。働き方の選択肢が広がるのと比例して、やりがいや達成感等、仕事への愛着が強く、幸福を感じられる人が増えていくのではないかと期待していますし、そういう人たちをサポートする存在として、この協会が機能できればと願っています。

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