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学生にも企業にも社会にも意味がある「インターンシップ」を考える。「インターンシップカンファレンス」初開催

インターンシップは、就業体験を通して学生が自分の将来を考えることができる最良の機会だ。
せっかくインターンシップに参加するなら、有意義な時間にしたいと誰もが思うものだろう。では、有意義なインターンシッププログラムとは、具体的にどのようなものを指すのだろうか。
2018年5月14日(月)、初めての取組みとなる「学生が選ぶインターンシップアワード」の表彰式を兼ねて開催された「インターンシップカンファレンス」。「インターンシップについて考える場」として開催された現場を取材した。

「学生が選ぶインターンシップアワード」とは?

「学生が選ぶインターンシップアワード」は、経済産業省、厚生労働省、文部科学省、日本経済団体連合会、日本経済新聞社、マイナビの後援により実現した。

このインターンシップアワード開催の背景には、就職活動が後ろ倒しになった2015年卒以来のインターンシップの急増がある。
就業体験ができるインターンシップは学生のあいだで人気が高まり、この需要に応えるように、企業もこぞってインターンシップの実施に踏み切った。現在、インターンシップを実施している企業は、マイナビに掲載されているだけでも約7,000~8,000社にも上る。
インターンシップを実施する企業の増加は、学生にとっては良いことである一方、あまりにも短い期間で急増したために、プログラムに偏りがあるのは否めない。

インターンシップは決して就職活動の一環ではない。その存在意義は、大学の授業の延長線上に位置しながら、実地体験に重きを置いている。学生は、インターンシップを通して社会にふれることでキャリア観を醸成し、現在の自分に足りないものに気付くことができる。また、企業側はそれに対し、自社なりの環境を提供して支援するというのが本来のあるべき姿だ。
せっかく時間を割いて実施するのに、インターンシップの持つ教育効果が薄れてしまってはもったいない。今こそ、「こんなインターンシップが学生に望まれている」というベストプラクティスを広く知らしめ、全体的な質を高めていくことが求められている。これが、「学生が選ぶインターンシップアワード」開催の目的だ。

 

応募総数297プログラムから選ばれた大賞は「富士通株式会社」

表彰式を兼ねた「インターンシップカンファレンス」は、東京都千代田区の日経ホールにて開催された。キーノートスピーカーとして登壇したのは、前回この『トレンドnavi』で「人生100年時代、どう生きる!? 新しい社会人基礎力を考える」と題し、「人生100年時代の社会人基礎力」についてお話を伺った経済産業省の伊藤禎則参事官だ。インターンシップを『働く』と『学ぶ』をつなぐ存在と位置づけ、これからは学び続けて個々のスキルを絶え間なくアップデートしていくべき時代であると説く。

 

続いて、今回の選考に関わった学生たちによるパネルディスカッションがあり、インターンシップの在り方が「学生目線」で語られた。その後は、いよいよ「学生が選ぶインターンシップアワード」の表彰式となる。

初回のアワードには247社・297プログラムの応募があった。会場では上位5社が優秀賞として表彰され、さらにその中から大賞の企業が発表された。
記念すべき第1回、その頂点に立ったのは「富士通株式会社」。
学生自身に気付きの機会を多く与えたこと、手厚いフォロー、さらに全国各地の拠点でもインターンシップの受入を実施し、地方学生が参加しやすかった点などが高く評価されての受賞だ。
富士通株式会社人事本部人材採用センターセンター長の佐藤渉さんは「まさか大賞とは思わなかった。この受賞を礎とし、学生の成長に向けて我々は何ができるのかを考え続け、精進していきたい」と喜びを語った。

 

 

<優秀賞 他4社はこちら>

・株式会社栄水化学(本社:兵庫県)
・株式会社クラウンパッケージ(本社:愛知県)
・ボッシュ株式会社(日本法人:東京都)
・三井住友海上火災保険株式会社(本社:東京都)

※入賞9社については文末にご紹介いたします

受賞企業は学生の声を反映して決定

学生にとって望ましいインターンシッププログラムとはどのようなものか――。
「学生がこの先10年、20年続けていきたい仕事を見つける機会」となれば理想的ではあるが、なかなか現実的には難しい。せめて、「自分に合うか合わないかを判断できる場」であることが望まれる。
学生がそれを判断できているだけで、ミスマッチングによる就職直後の離職は防げるだろう。つまり、業務内容を具体的に把握できることがインターンシッププログラムの条件といえる。
アワードの評価基準は、上記の「業務内容を具体的に把握できること」の要素を、以下の5つのカテゴリーに落とし込むことで決定された。

<インターンシップアワードの評価基準>
・効果性
・独自性
・指導性(適正なフィードバックの有無)
・社員の協力体制
・情報の開示性(事前告知の内容と実際のプログラム内容にギャップがないか)

この5つの評価基準を基に、応募企業のインターンシップに参加した学生に対してアンケート調査を行い、さらに学生部会(大学1年生から大学院1年生で構成される学生)、および有識者部会で議論して、受賞企業が決定された。

インターンシップアワードがもたらすメリットと将来像

インターンシップアワードは今年初開催だが、この賞の存在は学生にとっても企業にとってもメリットのあるものだろう。以下に、インターンシップアワードがもたらすと考えられるメリットと将来像を挙げる。

学生と企業にとってメリットの大きな賞

このアワードの存在が学生のあいだで浸透していけば、いずれインターンシップを探す軸になることも考えられる。また、企業にとっても学生が何を求めているのかを知り、具体的な実施例を参考に、より良質なインターンシッププログラムを策定でき、多くの学生と接点が持てるというメリットが生まれる。

全国へのさらなる広がりで、中小企業へのフォーカスを期待

アワードの効果として期待されることのひとつが「インターンシップ実施のさらなる拡大」だ。インターンシップを実施している企業は急増したものの、そのほとんどは都市圏の、しかも、大手企業に集中している。
中小・中堅企業も含めて全国で実施されるようになれば、知名度の低い企業でも魅力を発掘し、学生の視野を広げる一助となるだろう。また、受賞企業の実績は、これから新たにインターンシップを導入する企業にとって参考になるはずだ。

低学年化により、学生が自分を見つめ直す時間が増える

インターンシップの広がりは、対象学生の低学年化に向けても期待される。現状では、大学3年生の参加が中心のインターンシップだが、1、2年生から経験することができれば、社会のさまざまな価値観を知った上で、じっくり自分のキャリアを考える貴重な機会を得ることになる。
また、夢や目標を叶えるには足りない部分を卒業までに埋めるべく、何かしらの行動をとる時間にあてることも可能だ。学生の希望を反映して、企業のインターンシッププログラムが多様化していくことが望ましい。

以上のように「学生が選ぶインターンシップアワード」は、これからのインターンシップが厚みと深みを増していくのに必要な、ひとつの道しるべとなるだろう。この度、初めてインターンシップアワードが開催されたことは大きな意味を持つが、何よりも重要なのは継続することである。学生と企業、どちらにとっても意義のあるインターンシップが、世の中のスタンダードになるその日まで――。

 

「2018年学生が選ぶインターンシップアワード 入賞」9社

・株式会社応用社会心理学研究所(大阪府)
・株式会社エス・ビー・シー(徳島県)
・鈴与商事株式会社(静岡県)
・ソニー株式会社(東京都)
・凸版印刷株式会社(東京都)
・トラスコ中山株式会社(東京都)
・株式会社トレンド・プロ(東京都)
・トヨタカローラ山形株式会社(山形県)
・株式会社三井住友銀行(東京都)
(企業は50音順)

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