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厚生労働省 伊藤正史参事官×マイナビ HRリサーチ部 栗田卓也×マイナビ 高橋誠人編集長

今、必要な支援とは?若者の雇用を考える


就職が決まらないまま大学を卒業する若者の就労は、社会的な課題となっている。学生が自分の適性を知り、活躍できる場所を見つけるためには、支援は必要不可欠になっている。厚生労働省の伊藤正史参事官と、マイナビHRリサーチ部の栗田卓也、7月より新しく編集長として就任した高橋誠人との鼎談で、行政による多様な取組みと学生の現状について話した。

若者の就労支援に特化した「新卒応援ハローワーク」

高橋:文部科学省の調査によれば、年々、就労者が増加する一方で、就職が決まらないまま卒業する学生が44,000人いるとのことです(平成29年度学校基本調査より)。厚生労働省としては、このデータをどうご覧になりますか?

伊藤:就職が決まらないまま卒業する学生は、大きく「就職準備中」と「進学準備中」の2つに分けられます。前者の、就職を希望しながら、何らかの理由で決まっていない人が、ストレートに社会的支援の対象となりますが、実態は上記の範囲にとどまらず、数字には表れない人もいます。例えば、労働市場で新卒という立場をキープするための意図的な留年や、大学院への進学準備を行いながら真意としては就職希望という人もいます。基礎的なデータをとらえた上で、数字には表れない学生の動きを探る現場感覚が必要だと考えています。

栗田:確かに、正しく現状を把握する必要がありますよね。厚生労働省ではこれまでも新卒者用の「新卒応援ハローワーク」を設置するなど、求職者に対する目配りが常になされていて、支援を行いやすいように組織の形を変えてきている印象があります。

伊藤:ありがとうございます。新卒応援ハローワークは、まさに利用者層(新卒者や既卒3年以内)のニーズや課題に応じた代表的な支援のひとつで、面接の指導などを行っています。

優良中小企業へのインセンティブやガイドラインを設定

高橋:未就労者を含めた若年層の支援について、ほかにはどのようなものがありますか

伊藤:2015年10月から、若者雇用に特化した「若者雇用促進法」を順次施行しています。例えば、求人企業に対して平均勤続年数や研修の有無といった職場情報の開示を求めるなどの規制により、若者にとっては的確な職業選択が可能になります。また、一定の労働関係法令違反があるような企業はハローワークにおいて求人不受理扱いにするなど、制度的に若者と企業の適切なマッチングを促進していきます。その一方で、優良企業を厚生労働大臣が認定する、「ユースエール認定制度」(※1)を作りました。

高橋:「ユースエール認定制度」の対象となるのは中小企業ですか?

伊藤:はい。大企業は法的に後押ししなくても一定の訴求力がありますので、ここで対象となるのは魅力ある職場環境や人材育成のしくみがある、キラリと光る中小企業です。これにより、中小企業にとっては労働条件や人材育成の環境を整備することがインセンティブとなり、若者が中小企業を選択する機会が増えると考えます。さらに、企業に対し多様な選考機会の提供をしてもらえるよう、「若者雇用促進法に基づく指針」(※2)というガイドラインを設定しています。

※1 若者の採用・育成に積極的で、若者の雇用管理の状況などが優良な中小企業を厚生労働大臣が認定する制度
※2 若者の雇用の促進等を図り、その能力を有効に発揮できる環境を整備するため、若者の適職の選択並びに職業能力の開発及び向上に関する措置等を総合的に講ずる「青少年の雇用の促進等に関する法律」(若者雇用促進法)が、平成27年10月1日から順次施行

地域で働き、生活するという選択を応援

高橋:「若者雇用促進法に基づく指針」では、どういった取り組みを促しているのでしょうか?

伊藤:直近の取り組みとしては、「地域限定正社員制度」の普及が挙げられます。働き方改革では、多様な働き方を目指していますが、その多様性の中に「地域」という視点があると考えました。地域限定というのは、結婚や介護などのライフイベントを考えたとき、生活設計がしやすい働き方であると思います。
実際に、地域に根ざした生き方を志向する若者は増えています。自分が生まれ育った土地や人を理解し、愛着を持っている人材をマッチングすることが、定着にもつながるのではないでしょうか。新卒者のニーズに応えるだけではなく、事業のサステナビリティ(持続可能性)としても機能することを期待しています。

高橋:しかし、地元に残りたい学生がいても、選べる求人が多くないのも現状です。ようやく見つけたと思うと、“転勤あり”だったりする。地域限定職というと、今は金融業が多い印象ですが、今後、業種が広がっていけば、選択する学生は増えていくのではないでしょうか。
その際には、ライフキャリアも考えなければなりません。30歳になったら違う働き方がしたくなるかもしれませんし、そのようなさまざまなキャリアの変化に対応する選択肢が必要だと私たちも思っています。

伊藤:地域限定正社員制度の導入検討を求める中で、企業にはきちんとしたキャリア展望の構築をお願いしています。「5年10年というロングタームで、キャリアアップにはこんな特徴があって、賃金的にはこんな上昇が見込めます」など、可能な範囲で提示していただきたいと思います。

栗田:選択肢を提示することは大事ですね。我々の業界としても、初任給を正しい形で表示するために、企業には基本給と付帯する手当を分けて出していただいています。ガイドラインには、ほかにどんな取り組みがありますか?

伊藤:秋季採用と通年採用を盛り込んでいます。「長期留学していた」「公務員を目指していたけど落ちてしまった」「経済的な理由で進学を断念した」「就活中に再認識して進路変更した」など、さまざまな理由で春季の採用時期を逃した学生がもう1年待たなくてはいけないのは、システムとして問題があります。
企業の募集選考にかかるコストは理解できるので強制はできませんが、できるだけ対応をお願いしたいと考えています。同様に、既卒者であっても概ね3年間は新卒と同じ条件で応募可能にしてほしいというのもポイントです。

栗田:「既卒3年は新卒扱い」は、マイナビの中でも定着してきています。既卒者調査をしておりますが、年々卒業してからマイナビを利用する学生が増えてきています。そういう意味では既卒の概念が揺らぎ、大きな変化が起こっていると感じます。

電話相談や企業アワードなど、多彩なチャネルで支援

栗田:新卒以外の支援としては、私たちもお手伝いさせていただいている「おしごとアドバイザー」(若者向け就職等に関する電話・メール相談事業)がありますね。

伊藤:ハローワークの基本は対面の相談ですが、アルバイトや学校などで利用時間内に来られない人もいますし、対面相談に抵抗のある人もいます。そこで新設したのが電話相談事業でした。メインターゲットは若者のフリーターなどで正社員就職を希望する人ですが、実際には転職相談もあり、対面ではとらえきれなかった多くのニーズを顕在化する役割を果たしています。

栗田:私は3年ほど、おしごとアドバイザーの検討委員を務めていますが、おっしゃるとおり、さまざまな方がさまざまな相談をされています。そこで課題としたのが、「電話で受けた相談をいかに適切な場所に案内するか」ということでした。これについては、この3年間でかなり道筋がついてきました。本来はハローワークにお返しすべきですが、地域やほかのサポート機関に回したほうが有効な相談もあります。交通整理というか、適切な振り分けの一端を、おしごとアドバイザーが担っているのかなと感じます。

伊藤:適切な交通整理ができることって、とても重要ですよね。そういう点でも、この事業を発展させていきたいと思っています。

栗田:ほかにも、新卒以外の支援として「グッドキャリア企業アワード」がありますね。

伊藤:はい。これは、魅力的なキャリアを従業員に提唱、実践する企業を表彰するための制度です。また、関連するしくみとして、「セルフ・キャリアドック」(※)の導入・普及にも取り組んでいます。
こうした取り組みの意図としては、キャリアの実現は職場と切り離せないものですから、職場の中で支援環境を整えることが王道だと考えたからです。また、若者にとって企業選択の決め手となるのは、職場環境やその先の展望となりますので、企業がきちんと展望を示すことこそが、人材の活躍や定着につながるはずなのです。

※従業員のキャリア形成を促進・支援することを目的として行われるキャリアコンサルタントによるコンサルティングやキャリア研修などを組み合わせた総合的な仕組み

高橋:これは若者に限らず、働く人すべてにとっていい環境になりますね。

伊藤
:おっしゃるとおりです。むしろ、ターゲットは若者だけではなく、シニアや女性など、多様な層が増えることが望ましいです。最近、企業内に“キャリア”という名称を冠した組織が増えている気がします。これは、経営者が従業員のキャリアに向き合っている証しではないでしょうか。

高橋:強制的な人事異動では成果が出しづらくなっていて、本人の意志やモチベーションをどうくむかが大事になっているのでしょうね。

伊藤:そうですね。企業内の人事部門や管理職の方がキャリアコンサルタントの資格を取得すれば、キャリア支援マインドに基づいた人事異動や部下のマネジメントが当たり前になります。そういう取組みが普及していったら、若者雇用対策とキャリア形成がひとつとなった組織(※)の意味合いも深まるのではないかと思います。

※2017年7月、若年者雇用対策担当組織とキャリア形成支援担当組織を統合する組織再編が行われた。

高橋:最後に、今後の就労支援についての展望をお聞かせください。

伊藤
:大学との連携を強化し、課題を抱える学生を早い時期にとらえて、必要な支援を行う体制を構築したいと思います。また、人材確保支援として、ユースエール認定をはじめとする魅力的な地方中小企業の情報発信策も強化していきます。
これらを実現するためには、若年労働市場をより複合的に分析しなければならず、我々もビッグデータを保有していますが、同じように豊富なデータを持つマイナビさんをはじめとする関係者との連携場面も大いに考えられます。非常に強い影響力を持つ就職情報サイトを運営する皆さんをはじめ、各事業社のご理解・ご協力なくして、さまざまな行政課題に有効なアプローチをすることはできません。新卒者、企業、さらに社会にとっても、より望ましい形を目指して、それぞれのリソースを共有できる流れを作っていきたいと考えています。

高橋:今日はありがとうございました。

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