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女性の活躍を後押しする“働き方改革”を形骸化させない秘訣とは

株式会社ランクアップ 代表取締役 岩崎 裕美子

“働いている、もしくは働きたいと願う女性の個性や能力が十分に発揮される社会” を目指し、活躍の場を広げるべく施行された「女性活躍推進法」。2022年の改定により、さらに企業や自治体などの取り組みに対する要請と注目が高まっている。

株式会社ランクアップは、ダイバーシティ経営を実践し、この女性活躍推進の領域で高く評価される存在だ。社員の8割が女性、その半数がママ社員だという同社の 環境・仕組みづくりの道のりとその根底にある思いについて、代表取締役の岩崎 裕美子氏に話を伺った。

自身の出産・子育ての経験が、ダイバーシティ経営の出発点に

“たった一人の悩みを解決することで、世界中の人たちの幸せに貢献する” ことを理念として掲げ、「マナラ ホットクレンジングゲル」をはじめとした、数々の人気商品を展開するランクアップ。

同社が高い評価を得ているのは、こだわりの詰まった製品だけではない。子育てをしながら働くママ社員を後押しする 仕組みづくりと充実した福利厚生によって、育休や産休からの復職率は100%を継続。

さらに、女性が活躍できる環境が認められ「第三回 WOMAN’s VALUE AWARD」では最優秀賞を受賞した他、生活と仕事の調和に向け優れた取り組みを行っているとして東京都より「東京ライフ・ワーク・バランス認定企業」の認定も受けている。その取り組みの一部をご紹介しよう。

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■スーパーフレックス制度:5〜22時までの間、自由に時間帯を選んで働ける

■子連れ出勤制度:学校の長期休暇時、預け先がない場合は子供を連れて出勤できる

■病児シッター使い放題制度:子供の急な発熱時などに、1回300円の自己負担でシッターにケアを依頼できる など

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2022年には、これらの多様な制度を積極的に活用して、男女を問わず子育てと仕事の両立を互いに理解・尊重し合えるようにと、社員育児憲章「7つの子育てランクアップ!術」も制定された。こうしたライフステージの変化を経ても誰もが活躍できる環境を目指すに至ったきっかけは、岩崎氏自身の出産だったという。

「寝る間も惜しんでパワフルに働くことを楽しんできた自分なら、子育てとの両立も難なく乗り越えられるだろう。みんなやっているのだから、と思っていました。

しかし会社を興して4年目に出産を経験し、その価値観は一変してしまったのです。2,3時間おきに起き出してずっと泣き続ける子を抱き、ご飯を食べさせ、寝かしつけることの繰り返し。保育園にお願いしても、遅くとも19時には迎えにいかなければいけませんから、キリのいいところまで仕事を終わらせることもできず、迎えに行けばもう自分の時間はありません。こんなにも大変なのか…と」

体力に自信のある自分でもこれだけ苦しいのなら、若い女性社員たちが出産を機に会社を辞めてしまうことは想像に難くない。この時の危機感は、前職での経験と重なったのだとか。

「会社を起こす前に勤めていた先では毎日の深夜残業が当たり前になっており、結婚・出産などの事情で、女性社員はみんな2,3年で辞めてしまうのです。その分採用を繰り返すことで管理職も疲弊し、辞めてしまうという悪循環をなかなか断ち切れずにいました。

その会社を離れたのは、“私自身も生涯ずっと働いていきたいけれど、この場所では難しい” と思ったからです。そして、自分が目指す働き方で一生涯活躍していける環境を自分でつくろうと。そんな思いで立ち上げたランクアップなのだから、自身の経験をふまえて、ママ社員が子育てとの両立に悩まなくてよい環境を今整えなければと改めて決意したのです」

 

方針やルールを設ける形ばかりの環境整備に終始しない、本質的な働き方改革を

社員が出産を経ても働き続けられる、活躍を諦めなくてよい環境を整えようと決意した岩崎氏は、業績は右肩上がり、さらにここからもう一段上の成長を、というタイミングで思い切った挙に出たという。

「一切の残業を禁止したのです。9〜18時を定時とし、1分たりとも残業せずに18時で全員が帰るよう社員に求めました」

事業が堅調である分やるべき仕事も数多く、社員からは「業務が忙しくて帰るわけにはいかない」「自分は子供がいないのだから残業させてほしい」と反対の声も多数上がったそうだ。しかし決意は変わらなかった。

「遅くまで働く体質が根付けば、この先ママ社員が増えた時にみんな辞めてしまいかねません。また早く帰る人・遅く帰る人の差が出てくると、早く帰るママたちは罪悪感を感じ、遅くまで残るメンバーは疲弊してしまうでしょう。

それに、うちの社員はみんな各分野のエースなんです。辞めてしまった仲間の代わりを採用しようと言っても、その穴を埋めるのは本当に大変なことですから。まだ長時間労働が深刻になっていない今のうちに、そしてまだママ社員が少ない今のうちに、動かなければいけないと訴えました」

さらにここで、業務の棚卸しを実施。社員一人ひとりの業務をすべて洗い出し、形骸化している作業を廃止した。また時間をかけて作り込まれていた会議資料を簡素化した上で、ボタン一つで資料作成ができるようにシステムを組んで自動化を行うなど、事務作業に必要な工数を徹底的に削減していったという。

単に方針やルールを設けて形ばかりの環境整備をするのではなく、仕事の仕組みから抜本的に変えることで、誰もが負い目を感じず働ける環境をつくる。この本質的な “働き方改革” によって、今も長時間労働をよしとしない文化は根付いている。

「現在は残業 “禁止” ではなくなり、事情があって残業に取り組むメンバーもいますが、それが当たり前のように続くことは許容していません。10年以上欠かさず月間の残業ランキングを出し、上位にランクインしたメンバーとはシステム化や外部パートナーへの委託など改善策を考える。この積み重ねによって、自分のやるべきことを効率よく終わらせて早く帰る習慣が維持されています」

 

環境づくりよりも先に、社員の“やりがい”がある

社会的な要請の高まりを受けてさまざまな企業が働き方改革に乗り出しているが、取り組みを全社に浸透させ、かつ業績を維持できている企業ばかりではない。ランクアップがこのように抜本的な改革を行い、稼働時間を制限してもなお堅調を維持できている秘訣はどこにあるのだろうか。

「私たちが成長を維持できている要因は、“悩み解決カンパニーになりたい” というぶれない目標(Objective)があり、さらに “その目標を達成するために自分がこの役割を受け持っている” という視点が個人に求める成果(Key Results)に明確に落とし込まれていること。そしてその役割とやるべきことを、一人ひとりがやりがいを持って全うしていることだと思っています。

そうやって自分が期待されていることを自覚して生き生きと働くエースたちを、どうしても失いたくない。失っては会社が立ち行かない。そんな必要に迫られて、いわゆる “働き方改革” に乗り出しているのであり、だからこそその改革も形骸化せずしっかりと根付いているのだと思います。

やはり、環境づくりが先に立ってしまってはいけないなと。まず先にやりがいや “この会社が好きだ” という思いがあり、あくまで環境はその次に来るものではないでしょうか」

 

男女がともに子育てに参加し、一生涯望む場所で活躍できるように

性別やライフステージに囚われず活躍する社員に支えられて成長を続けるランクアップの今後の展望を、岩崎氏はこう語る。

「夢は変わらず、悩み解決カンパニーになることです。私たちの製品には、一つひとつにペルソナではなく “ターゲット” がいるんです。スタイルに悩む社員が作った着圧ストッキング、深刻な肌荒れに悩んだ社員が3年半かけて生み出したスキンケア製品……そんなストーリーのある、製品を届けたい “たった一人” が明確なものをこれからも提供していきます」

そして最後に、女性活躍推進に取り組む先で目指す世界観を聞いた。

「最近では若い方々を中心に男性が育児休暇をとるケースも増えており、これは社会が変わるチャンスだと思っています。女性が “子供を産んだら戦力外” になってしまうような仕組みや環境を排して。男女が互いを認め合ってともに子育てに参加し、一生涯望む場所で活躍していけるような、そしてそんな子育てを社会が助けてあげられるような状態を目指していきたいですね」

 

取材=伊藤秋廣(エーアイプロダクション)/文=永田遥奈/撮影=梅田卓

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